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【10月号】翼
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2012/12/16
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今年のノーベル医学・ 生理学賞に京都大学教授 の山中伸弥氏が50歳とい う若さでの受賞に輝いた。教授は、再生医療の実現に道を開くiPS細胞(人工多能性幹細胞)を06年に開発し、ノーベル賞候補に一番近い日本人と言われていた▼教授は、「iPS細胞技術は非常に大きな可能性がある分野だが、まだ本当の意味で医学や薬の開発に役立ったと言えるところまで来ていない。私たちも日々挑戦している。希望を持っていてほしい」と極めて謙虚に話した。加えて、受賞の電話を受けた時は洗濯機を修理中であったとか、整形外科医になったが手術に時間がかかり仲間からジャマ中先生と言われたとかのエピソードも報道され、その人柄も賞賛されている▼快挙は、再生医療の実現に道を開くだけでなく、新薬の開発にもスピード感をもたらすことになり、極めて価値のあるものである。既に特許が取得されているものの、広く利用してほしいと言う教授の考えから特許料は極めて安く設定されているようである。ここにも教授の謙虚さが感じられる▼しかし教授は、間違った事への利用を懸念もしている。これまで軍事技術が民生用に転用されたものが多々ある。例えば電子レンジ・コンピューター・インターネット・太陽電池・デジタルカメラ・光ケーブル・レトルト食品や缶詰等々であり、日々の生活に欠かせないものとなっている▼今回の技術が金儲けに悪用されるだけでなく、軍事転用されることはないのか。人間のコピーさえ出来そうに考えられるが、悪用されると大変な問題を起こしかねない危険性を孕んでいる。既に大資本が投入されて利用開発競争が始まっているが、あくまで教授の思いにかなった利用の開発が急がれる。ノーベル賞授与はまさにそのことが期待されているであろう。
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